H0525_みちくさプレス86号
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※菊池英樹さんには、2020年3月にお話を伺いました。※掲載したホウレンソウケナガコナダニの主要な写真に関しましては、秋田県農業試験場にご提供いただきました。秋田では、果菜類の後作で冬場のほうれんそうをつくる生産者が多く、9月に播種をして12〜1月に収穫する作型が多くなっています。土壌害虫のホウレンソウケナガコナダニは、極端な暑さや寒さを嫌うので3〜6月、10〜12月の被害が多くなっています。ほうれんそうの生長点付近で増殖し、主に2〜6葉期の新葉を吸汁加害するので、展開葉はこぶ状の突起が生じて変形や奇形になります。被害が軽微であればB品で出荷可能ですが、葉の穴や変形が生じた場合は出荷できず、収量減となるので多発圃場では防除が重要と言えるでしょう。連作圃場での発生が多いのはよく知られていますが、カビ・コケ類・酵母などを好むため、未熟な堆肥を投入した圃場では発生が増える傾向にあるようです。    508  また、ホウレンソウケナガコナダニは、乾燥状態を避け多湿状態を好みます。通常、ほうれんそうの場合、播種時に灌水したあとは、棚持ちが悪くなるのを防ぐため生育期後半にほとんど灌水をしないケースが大半ですが、生育期に多量に灌水をする場合には注意が必要です。秋田県ではフォース粒剤の播種前処理後、2〜4葉期に茎葉散布(フォース粒剤とは系統の異なる散布剤)を2回程度実施する体系防除を推奨しています。ホウレンソウケナガコナダニは新芽付近に潜んでいることから、生育期の茎葉散布剤がかかりにくいので、播種前の土壌処理が有効です。数年前までは、効果の高い土壌処理剤がなく、現場も苦慮していたのですが、フォース粒剤がほうれんそうの「ホウレンソウケナガコナダニ」に登録を取得してからは、播種前のフォース粒剤による土壌処理がスタンダードになりました。フォース粒剤は、土壌処理した処理層の周辺にいるホウレンソウケナガコナダニの密度を下げ、生育期に近寄ってくる密度を減らしてくれるので、生育期の茎葉散布剤(フォース粒剤とは系統の異なる散布剤)と組み合わせて効率的に防除することができます。トータルとしては、未熟な堆肥を施用しない、植物残渣処理の徹底、太陽熱による土壌消毒など耕種的防除により、密度を増やさない環境づくりが大切です。そして播種前のフォース粒剤と、生育期の茎葉散布剤を組み合わせた防除体系で、しっかり防除するようにしましょう。被害度冬場のほうれんそうで 被害が多発未熟な堆肥、多湿を好む ホウレンソウケナガコナダニ土壌処理剤には フォース粒剤を推奨ほうれんそう2016年秋田県農業試験場害虫の発生状況:少発生(放虫)品種:サンホープセブン   播種:9月8日処理日:9月8日(播種直前)処理方法:各薬剤を全面土壌混和調査方法:収穫時(10月14日)に各区100株を採取。     被害葉を被害程度別に調査し、被害度を算出。ホウレンソウケナガコナダニが葉裏に寄生する様子ホウレンソウケナガコナダニによる被害菊池英樹さん1510■フォース粒剤のホウレンソウケナガコナダニに 対する防除効果14.17.94.1フォース粒剤D剤無処理9kg/10a30kg/10a秋田県山本地域振興局農林部(元 秋田県農業試験場 生産環境部病害虫担当 主任研究員)薬剤がかかりにくい場所に潜む「ホウレンソウケナガコナダニ」を効率防除。

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