宮城県水稲 人と環境にやさしい農業を目指し、平成15年より減農薬・減化学肥料で環境に配慮した「環境保全米」を生産するJAみやぎ登米。平成18年からは環境保全への取り組みの効果を確認するため『田んぼの生き物調査』に毎年取り組んでいます。節目の10回目となった平成27年、同JAの榊原組合長にこれまでの歩みを振り返っていただきました。 「平成15年には水稲の全生産量の10%にも満たなかった環境保全米が、現在では80%を超えており、ヨーロッパカブトエビ、アキアカネ、ノシメトンボ、トウキョウダルマガエルといった貴重な生き物も年々増え、環境保全への取り組みが着実に実を結んでいると考えています」。 今回の調査で確認できた生き物は、過去最多の48種類を上回るアキアカネを含む11種類(昨年は6種類)が確認されました。毎年講師を務める環境科学博士の谷幸三氏からも「生き物がいない田んぼで米がつくられるのはとても恐ろしいこと。登米の水田環境は大変素晴らしい」と太鼓判を押していただいています。 「今回の調査の目的は、水田の環境調査だけではなく、地域の方々に自分の住んでいるところの良さを再発見していただくことです。それとともに、最近は田んぼにどんな生き物がいるか知らない子供さんが多いので、そんな子供たちにも〝登米の田んぼにはこんなにたくさんの生き物が住んでいるんだよ〟と伝えることを大きな目的のひとつにしています」。 子供たちへの想いを実現するため、JAみやぎ登米では農業体験を通じて自然、命、食の大切さを伝える食育イベント『あぐリズム』を平成22年より実施。そして今回、田んぼの生き物調査10周年ということもあり、「あぐリズム」の子供たちとのコラボレーションを初めて試みました。 「子供たちにこの地域の生態系を知ってもらうには実際に見てもらうのが一番ですからね。これからも地域の将来を担う子供たちに環境の大切さを伝え、豊かな生態系を末永く守ってもらえたら何よりです」。 環境保全米が生態系に負担が少ないことを実証するとともに、登米の生態系の豊かさを地域の方々へ伝えるべく取り組む田んぼの生き物調査。確かな成果を見せる現状に満足することなく、榊原組合長はさらなる目標を見据えます。 「環境は点ではなく面で守らなければ意味がありません。日本中が自然との共存共栄に配慮した農業へと転換していけるよう、まずは我々から環境にやさしい農業を推進していこう、そんなふうに考えています」。過去最多の57種類にのぼる田んぼの生き物を確認環境は点ではなく面で守らなければ意味がないみちくさ動画みちくさ動画ウェブで公開中! 道草みち子57種類を記録。とくにトンボ類は今年は、消費者を含む約150人もの方々が参加環境保全への取り組みに手応えを感じる榊原 勇組合長田んぼで捕れたさまざまな生き物に興味津々の子供たち“生きた化石”ヨーロッパカブトエビも増加傾向にあるⓇはシンジェンタ社の登録商標TMはシンジェンタ社の商標2015年7月作成(KF/YY)今回おたずねしたのは、自然との共存共栄を目指し「田んぼの生き物調査」に取り組むJAみやぎ登米管内。記念すべき10周年を迎えた今年、生き物調査の目的と目標を榊原 勇組合長にあらためてお伺いしました。
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