いちご いちご栽培における重要課題は「ハダニ」の防除化学農薬だけの防除体系では、被害が大きくなりがちな理由天敵と化学農薬を組み合わせた、ハダニ防除の推奨プログラムいちごの生産現場では、ハダニの発生によるいちごへの被害や収量減はもちろんのこと、その防除が困難なことから、防除回数・コストが増えてしまうといった課題を抱えています。ハダニはいったん密度が高まってしまうと、減少させるのが非常に困難になりますが、その主な理由の一つは「殺虫剤抵抗性の発達が早いこと」。現在流通している殺ダニ剤の多くは、全国各地で感受性低下や抵抗性が報告されており、有効な薬剤が少ないのが現状です。二つ目は「本圃で葉が繁茂するようになると葉裏のハダニに薬剤がかかりにくい」ということ。ほとんどの殺ダニ剤は強い浸達性を有していないので、葉裏のハダニに有効成分が届きません。ハダニの密度が一定以上になると、いちごの葉はクモの巣に覆われて生育障害を引き起こします。特に、2月中旬以降にこの状態になると新芽も花房も発生しなくなり、大幅な収量減となります。これまでの経験から、天敵を使わない化学農薬のみの防除体系の場合、その傾向が顕著です。 5なると葉裏全体の50〜60%程度しか薬いちごは栽培後期の2、3月ごろになると葉が繁茂するため、ハダニが生息する葉裏に薬剤を100%付着させることは不可能です。JA全農が実施した薬剤付着性試験では、栽培後期に剤が付着していないことが分かりました。こうした化学農薬の取りこぼしを補完するためにも化学農薬だけでなく、天敵を組み合わせた防除体系が必要になります。いちごのハダニ防除における化学農薬による防除は、薬剤がかかりやすく、しかも散布労力が少なくて済む「育苗期間」に注力し、ハダニ密度を極めて低く抑えることが重要です。そして、本圃では天敵資材を導入し、化学農薬と組み合わせることで、作期を通じてハダニの密度を極めて低くすることが可能になります。当プロジェクトでは、現地試験などを通じて「ハダニ類を主体とした病害虫防除推奨プログラム」を構築しました。このプログラムの核となる「ミヤコバンカーⓇ」は、圃場により多くのカブリダニを定着させることができる画期的な天敵資材です。天敵のパック製剤と餌ダニ、最適な増殖環境のための保水ポリマー、灌水、薬剤散布などで天敵パックが濡れることを防ぐバンカーシートから構成されており、長期間にわたり天敵のカブリダニが放出されます。いちごで問題となるナミハダニハダニにより赤くなった被害葉の葉裏(上)とクモの巣に覆われる被害葉(下)天敵ミヤコカブリダニ(上)ミヤコバンカーは必ず立てて設置する(下)JA全農 耕種資材部農薬課 中島 哲男 さん*ミヤコバンカーⓇは石原産業株式会社の登録商標栽培や防除技術の開発・研究の現場から、試験結果や研究成果など最新情報をお届けします。お話を伺った方今回のテーマ「いちご」JA全農ハダニ発生ピークのない体系防除プログラムで、作期を通じた安定したいちご生産へ。みちくさアカデミー
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