いちご 天敵への影響日数が短いアグリメックをトップバッターにいちごの病害虫防除の重要なポイントとは?殺虫剤アグリメックは、ハダニに対して大きな感受性低下が問題となっていない数少ない薬剤であり、天敵のミヤコカブリダニへの影響日数が7日と短い殺虫剤です。推奨プログラムでは「ミヤコバンカー」を定植後の10〜11月に設置しますが、前年ハダニ多発圃場の場合は、それに加えて育苗期の5月中旬にも設置が必要です。5月上旬の防除は「ミヤコバンカー」への影響を考慮し、かつ感受性低下の報告が少ない薬剤ということでアグリメックをトップバッターに位置づけました。 6う現場の経験を活かし、8月にもアグさらに、全国のいちご産地を巡回している際に、多くのいちご生産者の方が育苗期の8月にアグリメックを散布して、ハダニ抑制に成功していたといリメックを必須防除としています。育苗期はハダニだけでなく「炭疽病防除」と「薬剤の散布水量の確保」がポイントです。炭疽病は発生が確認されてからでは防除は困難で、いかに定植前に健苗を維持するかが重要です。本プログラムでも炭疽病と灰色かび病を同時防除し、耐性菌にも確実な効果を示すセイビアーフロアブル20を採用しています。薬剤散布水量については、複数圃場で比較試験を実施した結果、育苗期の散布水量は10a分の苗にあたる子株6000株に対して最低でも60〜70ℓ、できれば100ℓの散布、本圃では10aに対して250〜300ℓの散布水量であれば、薬剤の効果を十分に発揮できる付着量となることがわかりました。本圃では、ハウスを適当な湿度に保つことや、「アザミウマ類防除」が重要です。しかし、4月上旬まではハダニ防除も考慮し、天敵カブリダニへの影響がない薬剤で防除しなければなりません。アザミウマ類に防除効果があり、かつカブリダニへの影響が少ない薬剤はIGR*系統で、その中で幼虫への効果が高く、卵へのふ化抑制効果があるマッチ乳剤を推奨プログラム中の12月にポジショニングしています。■ハダニ類を主体とした病害虫防除推奨プログラム(害虫防除抜粋)育苗期〜定植〜ミヤコバンカー設置まで対象害虫防除時期5月上旬5月中旬6月中旬6月下旬7月中旬8月中旬8月下旬9月上旬9月中旬10月上旬10月中旬〜11月上旬アザミウマ類<ヒラズハナアザミウマ>(上)は、果実が石のように硬くなってしまう「石果」という被害を招く(下)*IGR:Insect Growth Regulatorの頭文字を取ったもので、昆虫成長制御剤を意味する天敵放飼・薬剤防除等アグリメック(1000倍)天敵資材ミヤコバンカー 100個/10a分苗前年ハダニ多発圃場のみ施用気門封鎖系殺虫剤イソオキサゾリン系殺虫剤気門封鎖系殺虫剤+殺卵活性を有するダニ剤気門封鎖系殺虫剤+殺卵活性を有するダニ剤アグリメック(1000倍)環状ケトエノール系殺虫剤(灌注処理)必須防除(高濃度、少水量灌注)気門封鎖系殺虫剤環状アミン系殺ダニ剤ハダニ天敵資材ミヤコバンカー100個/10aミヤコバンカー設置後〜収穫終了まで対象害虫防除時期天敵放飼・薬剤防除等ネオニコチノイド系殺虫剤 A剤ネオニコチノイド系殺虫剤 B剤マッチ乳剤(1000倍)気門封鎖系殺虫剤天敵資材ミヤコバンカー100個/10aの追加放飼+チリカブリダニをスポット放飼スポット的なハダニ発生があった場合に施用ピリジンカルボキシアミド系殺虫剤臨機防除ベンゾイル尿素系殺虫剤(IGR剤)天敵資材アカメ 3本/10aイソオキサゾリン系殺虫剤ピリダジノン系殺ダニ剤スピノシン系殺虫剤環状ケトエノール系殺虫剤アブラムシ11月上旬アザミウマ12月上〜中旬12月中旬ハダニ1月中旬アブラムシ1月下旬2月上〜中旬2月下旬4月中旬4月下旬5月上旬5月中旬アザミウマホコリダニアザミウマアブラムシコナジラミ「いちごハダニゼロプロジェクト」とは?天敵・農薬メーカー5社と共同で昨年5月より始動。育苗期間中にハダニ密度を「ゼロ」に抑え、定植後は天敵と化学農薬を組み合わせた防除により、栽培期間を通じてハダニ発生のピークを極めて低くする取り組み。防除のポイント必須防除臨機防除(スポット的なハダニ発生があった場合)必須防除(6月下旬散布厳守)必須防除(卵活性を有するダニ剤については抵抗性の有無を考慮して選択)必須防除臨機防除(スポット的なハダニ発生があった場合)必須防除・畝マルチ展帳直後に設置・スポット的なハダニ発生が残っていたら200個/10a に加え、チリカブリダニをスポット放飼防除のポイント臨機防除5日間隔 2回連続散布臨機防除(スポット的なハダニ発生があった場合)5日間隔 2回連続散布臨機防除臨機防除国内でおよそ5000haの栽培面積を有する「いちご」。各産地の生産現場ではハダニ防除の難しさが課題となっています。その対策として、JA全農では「いちごハダニゼロプロジェクト」の活動を2020年よりスタート。JA全農の中島哲男さんにお話を伺いました。
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