みちくさプレス92号
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青森県の農業を技術面で支える「青森県産業技術センター野菜研究所」。同研究所内の病害虫管理部では、ながいもなどの特産野菜における輪作体系の開発や、問題となる病害虫の生態解明および防除対策の確立などを担っています。全国シェアの40%を占める青森県のながいも。その収穫後に多くの生産者を悩ませていた症状の正体が、つい最近明らかになりました。「以前より収穫直後や貯蔵後などに見られる腐敗症状が大きな問題となっていました。その病原を調査した結果、ある細菌が深く関わっていることを究明しました。私はその細菌病を『ヤマノイモ腐敗細菌病』と名付け、2022年の論文で発表しました」と話すのは、病害虫管理部の近藤部長。このヤマノイモ腐敗細菌病を誘発する可能性のひとつと考えられているのが根腐病なのだといいます。「ヤマノイモ腐敗細菌病は、栽培時に病原菌などによって生じた傷などから感染する可能性が高いと考えています。その病原菌の代表ともいえるのが根腐病菌です。根腐病は青森県でも古くから問題になっており、発生すると収量・品質に多大なる悪影響を与えます。その根腐病の発生を回避するための基本が輪作です」と断言する近藤部長。しかし、どうしてもながいもを連作しなければならない場合や、根菜類の栽培が続いてしまい根腐病が発生してしまったときは薬剤に頼らざるを得ません。「青森県においても、古くから根腐病対策には毒性の高い成分を含む土壌くん蒸剤処理が広く行われてきましたが、環境負荷や作業者の健康への懸念から使用量の削減が求められる傾向にあります」と、そのリスクを懸念します。そんな毒性の高い成分を含む土壌くん蒸剤に代わる根腐病対策の薬剤として期待されているのが、人と環境により安全な製品で、持続可能な農業を支援する「ユニフォーム粒剤」。病害虫管理部では2022年にユニフォーム粒剤と毒性の高い成分を含む土壌くん蒸剤A剤(以下、土壌くん蒸剤A剤)をさまざまな角度から比較。代替剤としての可能性を模索されました。謎の腐敗症状の正体が明らかに。それを誘発する可能性の高い病害とは環境負荷や健康被害への懸念から、毒性の高い土壌くん蒸剤は削減の傾向毒性の高い土壌くん蒸剤の代替剤として期待される、ユニフォーム粒剤 亨─── 9インタビュー記事全文は青森県産業技術センター 野菜研究所防除価8.44.290.662.844.5WEBで!ヤマノイモ根腐病に対するトレンチャー耕同時処理でのユニフォーム粒剤の防除効果発病度供試薬剤チェーン式トレンチャーによるホイール式トレンチャーによるホイール式トレンチャーによる試験場所:六戸町(野菜研圃場) 品種:ながいも(新世紀) 植え付け:令和4年5月24日処理時期:ユニフォーム粒剤(令和4年5月19日)、土壌くん蒸剤A剤(令和4年4月25日~5月16日)病原菌接種:すべての試験区(土壌くん蒸剤A剤区:4月18日、その他の区:5月19 日)で、大麦粒にて培養したRhizoctonia solani AG2-2 Ⅲ-B(十勝農試分離株)を、1m当たり20g作条に散布し、トレンチャー耕にて土壌混合した。発生状況:多発生、面積区制:1区43.2m2、2連制(1区画2畝のうち75株〈1ヵ所当たり連続25株で3ヵ所〉調査。数値は2連制平均)18kg/10a調査株数発病株率(%)処理方法142作条土壌混和18kg/10a136作条土壌混和36kg/10a139作条土壌混和30ℓ/10a土壌くん蒸1431232.11.696.44.42.694.23.51.995.7薬害なしなしなしなしヤマノイモ腐敗細菌病の症状(青森県産業技術センター 野菜研究所)ユニフォーム粒剤ユニフォーム粒剤ユニフォーム粒剤土壌くん蒸剤A剤無処理ながいもの宿敵ともいえる根腐病。発生させてしまうと品質を落とすばかりか、大幅な減収につながることも。さらに近年、この根腐病が新たな病害を誘発している可能性が高いことがわかりました。その病害をより安全に防除できる薬剤として期待される、ユニフォーム粒剤の可能性に迫ります。

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